再婚したときに養育費はどうなるのでしょうか。実は結構ややこしい問題があります。いくつかに場合分けします。
「養育費を支払っている側の再婚」
①再婚した場合にどうなるか。
②再婚してさらに再婚相手との間に子どもが生まれた場合はどうなるか。
③再婚相手の子どもを養子縁組した場合はどうなるか。
「養育費を受け取っている側の再婚」
④養育費を受け取っている側が再婚した場合にどうなるか。
⑤再婚相手と子どもが養子縁組した場合はどうなるか。
⑥再婚してさらに再婚相手との間に子どもが生まれた場合はどうなるか。
なお、最後に「養育費の変更の生じる時期」についても説明します。
養育費を支払っている側の再婚
再婚しただけの場合(①)
これは基本的には、元々支払っている養育費に影響しない事実とされています。
再婚してさらに再婚相手との間に子どもが生まれた場合(②)
養育費を支払っている側が養育すべき人数が、計算上増えることになりますので、元々の養育費の減額事由となります。
ではどこまで減額されるのでしょうか。
元々いた子どもが1人で、新たに生まれた子どもも1人という場合を例に考えてみると、子どもが2人になったんだから、半分でしょうか。
簡易な計算としてはそういう考え方もありますし、実際そのように変更しているケースもあります。
ただしきちんと計算した場合の計算式は少し異なるものですし、そのときの様々な状況を踏まえて、異なる結果になったケースも珍しくありません。
事情変更が生じた場合の養育費の見直しにおいては、一度取り決めた時点での双方の収入を基礎とするのではなく、見直し時点での双方の収入を基礎とすることが多いです。
再婚して再婚相手の子を養子縁組した場合(③)
②の場合と同様です。養育費の減額事由となります。
ただし、再婚相手の年収がきわめて高額だった場合に、実質的には再婚相手が引き続きその子を養育しているとみて、元々の養育費には影響しないという考え方も、もしかしたら成り立つのかも知れません。(あくまで理論的な話です)
養育費を受け取っている側の再婚
再婚しただけの場合(④)
これも基本的には、元々受け取っている養育費に影響しない事実とされています。
ただし、例外もあります。
例えば、宇都宮家庭裁判所令和4年5月13日審判(判例タイムズ1516号252頁等)は、養育費を受け取っている元妻が再婚し、再婚相手と同居することになった事案において、再婚相手が元夫の子と養子縁組をしていないにもかかわらず、事情変更を認め、元妻の収入に再婚相手の収入の一部を加算して計算した上で、養育費を算定(減額)しています。ただし事実関係に特殊な部分のある事例です。
再婚して養子縁組した場合(⑤)
これが世間の感覚からすれば一番意外な結論かも知れません。
再婚相手と子が養子縁組した場合、一次的な扶養義務を再婚相手が負うようになり、元々養育費を支払っていた側の扶養義務は二次的なものに下がります。
言い方を変えれば、基本的には、元々の養育費支払義務は消滅するということになります。
ただし、これも例外があります。監護親と再婚相手の資力が十分でなく、十分に扶養義務を果たせないとき(単に再婚相手の方が収入が低いというだけではありません)には、元々養育費を支払っていた側が、不足分を補う養育費を支払い続けることになります。
例えば、福岡高等裁判所平成29年9月20日決定(判例時報2366号25頁等)は、監護親・再婚相手世帯の基礎収入と、最低生活費を比較したうえで、養子縁組後の養育費についても、免除ではなく減額のみを認めています。
再婚相手の子を養子縁組した場合(⑥)
養育費を受け取っている側が再婚相手の子を養子縁組した場合、元々受け取っている養育費には影響しない事実だと思われます。
養育費の変動の生じる時期
養育費増額請求または減額請求を行う者が、相手に対しその意思を表明したときから、養育費額を変更するのが相当であるとされています。
一般的には、調停申立時から変更とされている例が多いです。
ただし、調停を申し立てたとしても、当然のことながら、申し立てた瞬間に調停が成立したり、審判が確定したりするわけではありません。
ちょっとややこしいのですが、例えば、⑤のケースを念頭に、1月に養育費を受け取っている側が再婚して子が再婚相手と養子縁組し、4月に相手から養育費減額調停が申し立てられ、7月に養育費減額調停が成立した(または養育費減額審判が確定した)ことで養育費の免除が決まったとします。
この場合、基本的な考え方として、計算上は4月から養育費支払義務が消滅することになりますが、それが確定するのは7月ということになります。
そのため、4月以降も養育費を支払い続けていたのであれば、過払いとしての返金処理となることが多いです。
ただし、特に調停の場合には、既に使われた金銭であるからと過払金の請求はしない(上記の例でいえば7月からゼロにすることだけ合意)という例も散見されますし、例えば東京高等裁判所平成28年12月6日決定(判例タイムズ1446号122頁等)は、調停申立てより前、養育費を支払わない意思を示して支払を打ち切った時点以降の免除を認めています。ただし、同事案には、養育費を支払わない意思を、口頭ではなく、関連事件における主張書面で示しているという特徴があります。
