当事務所ではこれまで多くの離婚事件や男女間の問題を取り扱ってきました。
その経験を踏まえて、「離婚には戦略が必要だ」と考えています。
離婚においては、どのような流れで物事を進めていくかをシミュレーションした上で、いつどの時点で何をするか決めていくことが大事です。
協議か調停か
最初に悩むのが、協議を進めていくのか、調停を進めていくのかということです。
協議がうまくいけば柔軟かつ早期解決も可能ですが、うまくいかなかったならば、最初から調停をしていた場合と比べて、余計に時間がかかってしまうこともあります。
また別の切り口として、調停よりも協議の方が有利な条件を得られそうということであれば、余計に時間がかかってしまうリスクを受け入れた上で、まずは協議からということもあります。
いずれにせよ、協議で進めた場合にどうなるか、調停で進めた場合にどうなるか、見通しを立てることが重要です。
別居するときに
例えば、離婚調停(正確には「夫婦関係調整調停(離婚)」といいます)を申し立てることにして、調停前に別居することを決めたとします。
そのときに、
・近くに住んだ方がいいのか、遠くに住んだ方がいいのか。
・実家に帰れるなら実家に帰った方がいいのか、そうじゃないのか。
・転居先は相手に伝えた方がいいのか、伝えなくていいのか。
・別居のことはいつ伝えるべきか。
・住民票はどうすればいいのか。
・別居するときにお子さんのことはどうなるのか。
・家具家電は持っていっていいのか。
・転居費用は相手に請求できるのか。
・別居するときに相手の同意は得る必要があるのか。
・逆に、相手が出ていきそう、あるいは出ていくと通告されたときに、どう対応したらいいのか。
こんなふうに、検討する事項は(※この中には検討自体必要ないものや、特に改正民法下で重要になったものもあるのですが)たくさんあります。
弁護士のアドバイスを受けるなどして結論が出た時点で、それぞれいつどのように行うかを、組み立てていくことになります。
戦略なしに別居を始めてしまうと
戦略なしに別居を始めた結果、後で、家賃の二重払いを強いられたり、相手から悪意の遺棄だと非難されたり、私物を回収できなくなったり、あるいは離婚条件を決めるにあたって不利な立場に置かれてしまったりということは、珍しくありません。
事案によっては、元々住んでいたところの住宅ローンと、新しく借りたところの家賃を両方払わなければならず、しかも婚姻費用まで請求されてしまって、生活ができないということも起こります。
あるいは、婚姻費用を支払ってもらえると思って別居したものの、思っていたような時期や金額では支払ってもらえず、困ってしまうということも起こります。
ここでは、法的に何を支払う義務があるのか、あるいは何を受け取る権利があるのか、住宅ローンと婚姻費用との問題をどう考えるのか、当事者間で合意ができなかった場合に裁判所はどのような判断を示すのか、そういったことをある程度理解した上で、一つ一つの動きを考えていくことが重要です。
調停を申し立てる
調停申立後のことを考えてみます。
調停手続というものは、一回一回の期日の時間は限られていること、特に主張レベルについては、調停委員がメモを取ってそれを相手に伝えてもらうのが基本であることが、特徴といえます。(主張書面を提出しないわけではありませんが、経験上、基本的には口頭でのやり取りが中心となることが多いです。他方で証拠は書面等で提出します。)
ということは、言いたいことが色々あるとしても、ある程度取捨選択することが必要になってきます。
調停委員に対して一時間にわたって一方的にしゃべり続けたとします。
それで調停委員がこちらに同情的になってくれる可能性はゼロとは言いませんが、これまでの経験から申し上げると、その可能性は低いです。
実際には、途中で調停委員の集中力が切れてしまって重要なことがうまく伝わらなかった、時間切れになってしまった、独善的な人物だと思われてしまった、そのようなリスクは軽視できません。
また、例えば復縁希望の主張をしつつ、相手の悪口をあげつらねてしまうと、だったら離婚でいいんじゃないかという流れにもなりかねません。
調停においても、どのような流れが想定できて、その流れのためにはどの期日で何を主張し、どういった証拠を提出するかということが、重要だといえます。
離婚をすることに合意がない場合
今度は少し違う例です。
一方が離婚したいと言い、他方が離婚したくないと言っている、こんなケースはよくあります。
法律論だけでいくならば、有責性がなければ、一定期間の別居により離婚が認められることが多いです(裏を返せばその期間が経過するまでは離婚は認められない)。他方で、有責性(不貞や暴力等)があれば、それだけで、有責でない側からの離婚請求が認められ、有責である側からの離婚請求は認められないことが多いです。(いずれも例外はあります)
それを前提に、よく分からないけどとりあえず別居してみましょうかというのは、結果的にそれで間違っていなかったという例もあるものの、あまりお勧めしにくいところです。
そもそも、有責か否かというのが一つの出発点ですが、どう見ても真っ黒なケースもあれば、グレーというケースもあります。おそらく世間で考えられているよりも、裁判所は有責性の認定に慎重です。
弁護士が適切に事実や証拠を評価し、裁判所ならこう判断するだろうという見通しを立てるのが出発点になりそうです。
その結果、別居するのかしないのか、別居したとしてどのタイミングから離婚の話を始めるのか、離婚の話を始めるときに協議なのか調停なのか、そういったことを考えていくことになります。
その上で、離婚したくない理由が何であるかを突き詰めていくことも重要です。
例えば、愛情はないが経済的な不安だけが理由で離婚に応じないという場合、その後調停や裁判で想定できる期間の生活費を貰えれば、離婚に応じるということは往々にしてあります。
また、有責性がない場合は特にですが、離婚をしたくない側にとって不本意であっても、いつかは相手からの離婚請求が認められてしまう可能性が高いといえます。であればどのタイミングで離婚となるのがベターなのか、裁判になって判決が出るところまでなのか、それとも条件次第でもっと早いタイミングでの協議離婚を目指すのか、その辺りも先に考えておきたいところです。
もちろん、DV事案等で、すぐに別居しなければ生命・身体に危険が及ぶというケースであれば、それは直ちに別居すべきではあります。
重要なこと
重要なのは、様々なことを検討・想定した上で、各時点での動きを決めていく必要があるということです。
もちろん、最初から弁護士に相談されるケースばかりではありませんが、途中からであっても、そこから立てられる戦略というのがあります。
「離婚には戦略が必要」です。
