令和8年4月1日施行の改正民法について③

今回は、民法の改正のうち、離婚に関する改正(親権に関する部分以外)を取り上げます。

財産分与に関する改正

民法768条が改正されました。

第1項 (変更なし)
第2項「前項の規定による財産の分与について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、当事者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、離婚の時から五年を経過したときは、この限りでない。」
第3項「前項の場合には、家庭裁判所は、離婚後の当事者間の財産上の衡平を図るため、当事者双方がその婚姻中に取得し、又は維持した財産の額及びその取得又は維持についての各当事者の寄与の程度、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、婚姻中の協力及び扶助の状況、各当事者の年齢、心身の状況、職業及び収入その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める。この場合において、婚姻中の財産の取得又は維持についての各当事者の寄与の程度は、その程度が異なることが明らかでないときは、相等しいものとする。

条文の中で特に重要なポイントとしては、

①財産分与の請求ができる期間が2年から5年に延長されました。年金分割に関しても同様です。ただし、これが適用されるのは、令和8年4月1日以降に離婚が成立した夫婦です。

②財産分与の有無・金額・方法について、考慮要素が記載されました。特に、婚姻中の生活水準、各当事者の年齢、心身の状況は、これまであまり考慮されてこなかった要素かと思われます。今後は、両当事者とも、財産分与に関して具体的要素に基づく主張が求められることになりそうです。

③財産分与の割合について50:50を基本とすることが明記されました。ただし、従前の実務での取扱いと異なるものではありません。

夫婦間契約の取消しに関する規定の削除

改正前民法754条では、夫婦間の契約は婚姻中いつでも取り消せるものとされていました。ただし、第三者の権利を害することはできないほか、判例によって、その取消権は一定程度制限されており、婚姻関係が実質的に破綻している場合には取り消しができないものとされていました。

今回の改正により、この規定自体が削除されました。

そうすると、夫婦間で「○○をしたら△△をする」みたいな約束をした場合でも、取り消せないということになります。

ただし、夫婦間のことですので、本気ではないのに約束してしまったということは起こり得ます。例えば、相手が酔っ払っているのをいいことに、高額なものを買わせる契約書にサインさせた(あるいは気が大きくなっていて、自らサインしてしまった)ような場合です。

そのような場合には、個別具体的な事実関係によっては、それでも契約として効力が認められる場合もあるでしょうし、そもそも「契約」にはあたらない、意思能力がなかった、心裡留保(民法93条1項)による無効、といった考え方により、契約としての効力を認めないということも考えられます。

裁判離婚の事由の一つを削除

改正前民法770条1項4号にあった「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。」が裁判離婚の事由から削除されました。

ただし、近年滅多に使われることのなかった規定ですので、実務的な影響はあまりないものと思われます。

なお、配偶者が精神病である場合にも一切離婚できないというわけではなく、それ以外の様々な事情を考慮した上で、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」として、離婚が認められることはありそうです。